表現+空間移動=Mover

 この椅子は鑑賞者を実空間で移動させながら表現を可能としたアートマシン作品です。

 私は「鑑賞者を実空間で移動させる表現」に未知のアート表現の可能性を感じていました。

 人を実空間で移動させることには特別な意味があります。
この手法はエンターテイメントにおけるテーマパークのアトラクションに長く用いられてきました。それは一見、原始的ですが鑑賞者の五感に極めて複雑に特別な影響を与えます。
私はテーマパークにおける表現を考察し、個人で実現可能な最小限の実験を試みました。
実空間の移動に対して、近年は優れた仮想空間の表現手法が存在します。ヘッドマウントディスプレイを用いた複合表現や映像と傾きのアトラクションなどいずれも鑑賞者を固定した手法です。これらの手法の実験は現在盛んに行われています。しかし、鑑賞者を実空間で移動させるアトラクションが消えることはありませんでした。

 何故、鑑賞者を移動させる表現が無くならないのでしょうか。
その理由は人が実空間で移動することに特別な効果があるからであると考えました。
人は実空間を移動すると視覚だけでなく風、空気感(気温/湿度/音)、慣性力など複雑に相互作用がある要素で五感を感じるので人は空間を感じるのです。一方、仮想空間の移動は五感に対して色々な補助手法はあっても擬似的に止まり1次元的でそれらの相関も弱いので人は空間の移動を感じにくいのです。
実空間では非常に小さな移動であっても影響はとても大きいものです。
バーチャルリアリティの表現が盛んな今、私はあえて小さな移動でも仮想空間の移動を凌駕する何かがあることを感じ実験しました。

 ただ、「鑑賞者を移動させる表現」は大規模な設備が必要となり用途は娯楽に限られ、個人アーティストによるアート表現が困難でした。
私はこの椅子を製作し動画さえ作れば簡単にその表現を可能としました。

 今回は最小限の簡単なデモ動画&空間プログラムですが、様々なアーティストによって表現は可能でボタン一つで様々な空間プログラムに切り替えができます。

 

 

 

テクノロジー


Moverは複数台のプロジェクター(増減可能)と自動運転制御の電気カート、専用の内蔵コンピューターによって構成されています。運転と映像は専用のコンピューターによって同期したプログラムが可能です。フレームは鋼鉄製で体重約100kgまで乗車が可能です(環境によっては80kg程度の設定を行います)
 
 
Moverはレールに沿って移動します。そのレールを変えることで様々な空間移動の表現を可能としています。
運転はコンテンツに応じて自動的に制御されます。
   
   
    
 

  

アプリケーション


・The Art Ride

「The Art Ride」はMoverに乗って作品の中に突入し、「作品の中から作品を鑑賞できる絵画」をコンセプトとした実験作品です。
こちらは神戸ビエンナーレにて招待作品として2015年9月~11月に展示されました。
Moverの最小限のパッケージの簡易デモとしての作品です。作品中の動画はアップデート予定です。
(※9/22時点 展示期間中現在1台のプロジェクターが故障致しまして縮小体験のみとなっております)

・Movlus

MoverとHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を組み合わせることで、現実と仮想現実の空間移動をミックスすることが可能となります。
Oculusなどを装着してコンテンツに同期した空間移動体験は新しい表現となることでしょう。

 

 

 
 

世界観

MoverはJohnHathway氏の世界観内に存在していた哲学の作品です。作品中のMoverを現実世界へ輸入することがベースにあります。
JohnHathway公式web


(c)JohnHathway 2010

(c)JohnHathway 2011

Moverは並行空間がテーマとなった世界観「n-Dimension」に登場します。

 

 

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